第2章 「おい お前、俺を拾え」
『もし、行く先ないんなら.....
ここにいない?』
彼は目を見開いて
さやかの方を振り向いた。
その眼差しを避けるように
斜めに視線を逃す。
視線は逃げたが
彼の声が追いかけてきた。
「......自分の性別に自覚はあるのか?
若いお前からしたら大胆な案だな」
『分かってるよ』
ふて腐れたように
ますますら横を向く。
「俺はお前をベッドに運ぶとき
それなりに理性が必要だったが」
『.........それはどうも。』
でもだって。
『私、家事って苦手だし、
好きじゃないし、食生活も怠惰で
無駄なお金遣ってるし、
あなたが家にいて
その辺やってくれるのなら
同居のメリットは充分あるかなって。』
「根拠はそれだけか?
随分早計だな。俺は男だ。」
『拾ってって言ったの
そっちじゃない!!』
さやかは駄々を
こねる用に叫んだ。
『拾ったら情が移るじゃない、
このまま出て行かれたら、
二度と会えない人になったら
寂しいって思っちゃったんだから
仕方ないじゃない!
そのうえ、人の胃袋まで
がっちり摑まえてさ!』
死亡直前の卵と玉ねぎだけで。
あんなごはんがまた食べたいと
思わせるなんて反則だ。
彼が根負けしたように
小さく笑ったような気がした。