第2章 「おい お前、俺を拾え」
リュック一つで
行き倒れていた躾のいい犬。
彼はこれから
どこへ行くのだろう。
洗濯機は朝になってから回して。
昨夜そう言ったが、
彼は洗濯機を使わなかった。
そして洗面所に籠もり、
出てくると貸したスウェットを
私服に着替えていた。
昨日とは違う服だ。
昨日の服は汚れ物として
もう荷物の中に入れたのだろう。
スウェットは
きちんと畳まれていて、
きっと出がけに洗濯しないことを
詫びながら返すのだろうと思った。
寝袋を片付け始めた彼を
ベッドの上から三角座りで眺める。
『ねえ』
「何だ」
『どこか行く当てあるの?』
「......ねえな」
『また行き倒れるまで歩くの?』
「タイミングが悪くてな、
日雇いのバイト見つからなかった。
だからもう行き倒れは
しないとおもうがな。」
『ねえ』
そんなことを口走ったのは
自分でも何故だか分からない。