第16章 「春の野花 - タンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ」
リヴァイはそれ以上さやかを
撮る気は無さそうだったので、
さやかは慎重に載せられた
花かんむりを外した。
改めて見てみると、花の輪っかは
手の熱で大分だれている。
結び目で持つとだらんと
垂れ下がる状態だ。
『ちょっとくたびれちゃったね
かわいそうなことしちゃったかな』
とさやかが呟くと
リヴァイが小さく笑った。
『問題ない、野草は生命力が強い。
水に生けてやればすぐ元に戻るぞ』
「え、持って帰るの?」
花かんむりなんて編んで
その場で満足して
おいて帰るものだと思っていた。
「さやかが持って帰りたいならな」
『あ、うん、別に積極的に
捨てたいとは思わないけど......』
「じゃあ持って帰ればいいだろ
クソでも長引いてるみてえに
熱心に作って愛着ってもんがあるだろ?」
と、からかい口調で言われて
返す言葉はなく俯いた。
そのさやかの手から
ひょいと花かんむりを取り上げ、
リヴァイが散歩用の
トートバッグの中にしまう。
『リヴァイは写真、撮れたの?』
「ああ」
気づくとリヴァイのカメラも
もうケースに収まっている。
そしてリヴァイは
河川敷を上がる坂に向かった。