第16章 「春の野花 - タンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ」
その花かんむりをさやかの頭に載せる。
花かんむりはさやかの額まで
ずり落ちたが、何とかそこで止まった。
かんむりを両手で支えていると、
カシャッとシャッターの落ちる音がした。
『えっ』
顔を上げるとリヴァイが
さやかに向けたカメラから
顔を上げるところだった。
『やだ、何でいきなり撮るのよ!!』
「いい面してたからだ、ガキみたいにな」
そしてリヴァイはカメラの
ファインダーに今の一枚を
呼び出して見せた。
『.....ちょっと少女趣味すぎ。
あたしいくつだと思ってるの』
「いくつだ?」
『誕生日が来たら二十六』
「誕生日まだなんだな」
『誕生日は八月十五日。
だからまともに
祝ってもらえたことありませーん』
もろにお盆の真っ只中で、
さやかの誕生日は子供の頃から
キュウリの馬とナスの牛がセットだった。
どちらがメインのイベントだったのやら。
「狙い澄まされた
みてえな日取りだな」
『そうだよ、お盆の灯籠が
出てる部屋でケーキ切るんだから』
プレゼントのリクエストも
〝あんまりわがままを言ったら
ご先祖様に怒られるよ!〟
と脅かされ、
ご先祖様と言いつつも子供心には
ユーレイが家に来るとしか思えずに
結局親の都合と予算の中で
選ばされてばかりだった。