第2章 「おい お前、俺を拾え」
翌朝目を覚ますと布団の中に入っていた。
自分で入った記憶はない。
キッチンから微妙に見覚えのある
男が立っている。
一瞬記憶がぐちゃぐちゃに混乱する。
顔も寝起きだが強張った。
そんなさやかの顔を見て
男は近付いて来た。
「....待て、悲鳴上げたりするなよ。
俺がここにいるのは、昨日の時点で合意だ。
覚えてねぇなら説明する。」
『や、だいじょーぶ......
いい、だいぶ思い出した』
行き倒れてる。俺を拾え。
咬みはしない躾はなっている。
記憶の順列を正すキーワードがいくつか
泡のように浮かび上がり、
さやかは『ククッ』と喉で笑った。
男もその様子でさやかが
思い出したと察したらしい。
「ピーピー喚かれて不法侵入で
警察に突き出されるなんて
たまったもんじゃねえからな。」
『それであなたは
何をやってるの、ワンちゃん』
「さっさと顔洗ってこい。
先に目が覚めちまったから、
いろいろ勝手に借りた。」
ふと鼻をくすぐったのは
味噌汁の匂いである。
『朝ごはん......が作れるようなの、
うちにあった.....?』
「酷いザマだ。米と調味料はあったがな。
死にそうな卵と玉ねぎも借りたぞ」
『玉ねぎ?!そんなもんあった?!』
卵は覚えがある、十日ほど前に
突然卵かけご飯が食べたくなって
コンビニで六個入りパックを買った。
だが、玉ねぎは......まともに食材を
買った覚えはこの一ヶ月ほどない。