第12章 トト子なのだ
「本日はトト子ちゃんから皆さんに重要なお知らせがあります。それじゃ...」
「はい。」
チョロ松に促されてトト子ちゃんはゆっくりと俯いていた顔をあげた。なに、なにを宣言されるわけ?こっちまで緊張してくるんだけど。
「実は私...皆さんに隠していたことがあるんです...」
「AVに出てたの!?」
瞬時に反応した十四松におそ松が鉄拳を食らわす。確かにこの雰囲気でその発言はいただけないぞ十四松。
「実は私...アイドルを始めたんです。」
「...え?」
声が出たのは私だけだったが、みんな「...え?」みたいな顔をしてたから大丈夫。いや何が大丈夫なんだろうか。
「えー、補足しますと、彼女は何もただ趣味でやってるわけではありません。トト子ちゃんは御両親の魚屋さんが少しでも有名になればと、お店の宣伝も兼ねてアイドルの道を選んだのです。いわば美しき親孝行の姿なのです。...しかしこの度大きな問題が浮上した。そうだね?」
「はい...実は私...近々デビューライブを控えているのですが...その...えっと...ああっ、ダメチョロ松さん!とても言えないわ!」
「頑張れ!自分の口で言うんだ!」
言った後チラッとこっちを見てシャッターチャンスを作る。待って、これってもしかして演技してる?
「いや...何を見せられてんのこれ...」
「でもチョロ松さん...」
「大丈夫、皆さんきっと分かってくれるよ。」
「分かりました。トト子皆さんを信じます。」
「カンペみてるよ!?完全に芝居だよこれ!」
超棒読みで進んでいくチョロ松とトト子ちゃんの会話。おそ松でも分かる演技の下手さよ。なんか雲行きが怪しくなってきた...帰っていいかな?
「実は...そのデビューライブのチケットなんですが...全然売れてないんです!!」
「...え?そういうこと...?」
「...やっぱり...」
「つきましては心ある皆様に買っていただきたい。繰り返して言いますが、これお店のためです。御両親のためです。断じて自己満のアイドル活動ではございません!是非ご協力を!」