第7章 デート編〜チョロ松〜
「...で、どこ行くの?」
チョロ松を見ると至って普通の顔をしてたので、私も普段どおりを装う。いきなりデパート地区へ向かっていくので、チョロ松にしては珍しい。
「映画館。デートと言えば定番でしょ?」
映画館。確かに定番だが、ド定番すぎて呆れた。
「何、やだ?僕としてはやっぱり最初のデートだからさ、完璧かつスムーズに済ませたいわけ。だかr...」
「別にヤじゃないから。」
被せ気味に言ってやった。チラッとチョロ松を見てみると、少し焦りが伺えた。ボソッと「映画館はダメだったか...?」と考えるように言ってた。そういうことじゃないんだよチョロ松…
「ごめん、兄さん。少し嫌な態度取っちゃった。」
「え、あ。」
「本物のデートなわけじゃないから言うけどさ、こっちとしてはマニュアル通りのプランじゃなくて兄さんが行きたいなって思ったところがいいんだよね。」
「映画館じゃダメなの?」
「今回は私も行きたいからいいけど、ド定番は彼女に飽きられるよ?だからデートコースはもうちょい工夫した方がいいと思う。」
「飽きられる...」
「あと、服装褒めてくれなかったの少し悲しかった。気づいてたんなら何か言ってよ!スカートも邪魔くさいから普段着てないのに、我慢して着てきたんだよ!」
「え、あ、そうなんだ......ごめん。」
「いや、いいけどさ。映画館着いたよ。」
しまったかなぁ、ここで言うべきことじゃなかったかもしれない。落ち込んでるチョロ松を見ると、罪悪感が湧いてくる。
「何観たい?」
今やってる映画のパンフレットを渡された。私は大体映画はアニメ系しか観ないから、今回実は観るものに困ってたりする。
「こ...これかな?」
私が選んだのは高校生が主人公のサスペンスラブストーリー。これなら私も観れそうな気がした。
「じゃあ買ってくるね。」
迷いなくチケットを買ってこようとするチョロ松に慌てて私は止める。
「え?これでいいの?チョロ松兄さんは?」
「え?だってこれが観たいんでしょ?別に僕としては何でもいいし、なつきの意見尊重したいし。」
なんかデジャヴ。この感じ、トド松とのデートでも感じた...もしかして意外とトド松とチョロ松って似てるのかもしれない。いや、六つ子なんだけどさ。
「あ、ありがとう...。」
「うん。じゃあ行ってくるね。」