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月下に閃く漆黒の刃

第8章 袋小路


「あの、不死川さん」
「あ"?なんだァ」
「木刀、ふらせてください」
「ふざけんな。そんなフラフラの体でやらせられるかァ」
「そこをなんとか…!」
どうしても今の感覚を実際に体を動かして強く印象付けたい。今を逃したらきっとまた難航すると直感したから。
足が竦むほどの眼力に怯みそうになる心を叱咤し、私は不死川さんを見つめ続けた。
「…お願いします。不死川さん」
そして不死川さんはあからさまな大きいため息を1つした後木刀を一振渡してくれた。
「いいかァ。危険だと判断したら力ずくでも止めるからなァ」
「はい!ありがとうございます!!」




(全集中…全集中…)
不死川さんの立ち会いの元、私は木刀で一ノ型をやってみた。

風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ!

「あ、れ…?」
感じ取った感覚そのままに動いたはずなのに、ほんの少し風を切る音がしただけだった。
(なんで…?)
水の呼吸の時は出来たのに何故…、何かが足りなかった?本調子じゃないから上手く出来なかっただけ?
分からない。何がダメだったんだろうか。
「天斬」
「ぁ…す、すみませんでした!私のわがまま聞いてくれてありがとうございました!!」
「天斬」
「いやー、さすがにそんな早く扱えるわけないですよね!アハハハ」
「…天斬。話聞けェ」
「…っ」
「お前、何を隠してやがる」
「か、隠してないですよ!」
「壱ノ型の動きは出来てた。何故か成ってなかったがな。何故だァ?」
「な、何故って…」
「何故、教えてもいない風の呼吸の動きが出来たのかって聞いてんだァ」
「それ、は…」
「俺は今日、風の印象を強く焼き付けろと言った。それだけだ。なのにお前は技を繰り出そうとした。風の呼吸の型はまだ知らねぇはずだ」
言ってしまってもいいのだろうか。
彼を信用していないわけじゃない。顔や言葉遣いや威圧感は怖いけど、鬼殺隊を支えている柱のひとりだ。信用に値する人物であるのはわかっているのだが…。
(師匠に何も打ち明けられていないのにこの人に言ってもいいのだろうか)
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