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月下に閃く漆黒の刃

第9章 不本意の帰還


「それで?なにか聞きたいことでもあるのか」
「…色々、あります」
話をどう切り出したらいいのか悩んだが、それまでの間師匠は静かに待ってくれていた。
「まず…、水の呼吸を習得しに行った時なんですけど」
「…嗚呼、あの時か」
「鱗滝さんからの課題だった大岩を斬った時、私の体は"何かに引っ張られるように"動きました。私自身のものではない、知らない人の記憶のようなものに」
「…まぁ、そういう奴はたまに居るもんだ。何ら不思議な事じゃねぇよ」
否定されなかった。自分のものじゃない、別の誰かの記憶があること。もしここで否定されてしまったら後が続かなかったが、ほんの少し気が楽になった。
それがどうしたとでも言いたげな師範に、今度こそ本題を投げることにした。
「…師範は、千夜さんという女性の方を…知っていますか…?」
私の問いにピクリと若干の反応を見せた師範。
そしてその反応で悟った。千夜さんに関する問いかけは彼にとってとても繊細なものなのだと。
「そうか…なるほどな…」
師範はひとり納得いったようで、何度か頷き雑に頭を搔くとゆっくりと話し始めてくれた。
「そうだな、お前も影柱を継ぐのだから知っていた方がいいだろう。教えてやるよ千夜さんのこと」
それから私は姿勢を正し、師範の話に耳を傾けた。
「まず、お前が千夜さんの経験した記憶を視る事があるっていう現象についてだ。前世の記憶とまではいかねぇが、たまーにそういう現象を経験する奴はいる。だから変に重く捉えるなよ」
「はい。わかりました」
「よし。じゃあここからは俺が知る千夜さん…影宮千夜という女性(ひと)の話だ」
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