第7章 出立、記憶の片鱗
そして急いで旅支度――といっても準備するものもそんなに無いが――をし、翌朝の朝餉を終えてすぐに出立した。
場所は先日伺った産屋敷邸周辺らしく、道に迷うこともあまり無かった。
そして2日かかって辿り着いた風柱邸。周りが竹の塀で囲われていて危うく迷子になりかけたが。
「すみませーん!闇裂宇練の紹介で来た天斬神影ですー!どなたかいら――」
「うるせぇな。聞こえてるっつの」
「ひえっ!?」
あ、なんか前にも似た展開あったな、なんで音もなく背後にいるの怖いわホント。
「ぁ、あの…」
「あ"?」
(何この人!?めっちゃくちゃ威圧してくるんだが!? )
しかもよく見ると顔に腕に…恐らく身体中に大小様々な傷痕がある。一見堅気の人間に見えにくいような強面、そしてこの威圧的な口調。…まぁ"鬼狩り"という名がとてもお似合いだと思える、そんな外見をしている人だ。
「俺は不死川実弥。現風柱だ。闇裂さんに返答した通り、才能なしと判断した時は問答無用で送り返す。いいなぁ」
「の、のぞむところです!!」
「はっ!その威勢が続けばいいがな」
(嫌な言い方…!)
「着いてこい。まずはお前の程度を見る」
「はい!」
こうして、再び新たな呼吸法の習得という苦難の日々が始まった。
「もう嫌だ…帰りたい…」
呼吸法習得開始から2日、早くも私は挫折しかけていた。
風柱が課した私への見極め課題、それはひたすらに風柱へ木刀で打ち込み、一太刀入れるというものだった。
柱という鬼殺隊でも上位に君臨する強さの人相手にひよっこの私が一太刀でも入れられるものなのか?答えはもちろん否だ。
それに本当にこの人容赦ない。女相手だろうが構わず顔に腕に腹にとあちこちに打撃入れてくるんだ。これが真剣だったら今頃細切れになっていることだろう。