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月下に閃く漆黒の刃

第7章 出立、記憶の片鱗


産屋敷邸から帰ってきた私は師匠に言われた通り、一日だけ軽い鍛錬をして体をできるだけ休め、2日目からこれまで通りの鍛錬を開始した。
水の呼吸を扱えるようになったからか、以前よりも少し余裕を感じた。ちゃんと成長している証なのだろう。
そして数日後、私の鍛錬している様子を見ていた師匠が唐突にとんでもないことを言い放った。
「神影、お前まだ水の呼吸ひとつとはいえ呼吸法覚えたんだから常中やってみろ」
「じょうちゅう…?なんですかそれ、まさか常に呼吸法での呼吸をしろとか言わないですよね?」
「残念だな、そのまさかだ」
「は!?何言ってんですか!!まだ扱えるようになって日が浅いのにそんなの出来るわけが…!」
「影柱を継ぐなら全集中・常中は必須項目だ。それにこれが出来れば今よりも飛躍的に能力が向上する」
「で、でも…」
他の呼吸法も使えるようにならねばならないのに、全集中の呼吸を常にするなど本当に死んでしまいやしないだろうか。いや、マジで。
「なぁに、俺だってそこまで鬼畜じゃねぇよ。少しずつ肺の強化をするように鍛錬法を変えりゃいい。日中はとにかく走り込みして肺を酷使し、夜は全身に酸素を巡らせるように休ませながらゆっくりと肺を動かす。寝てる間もできるようになれば上出来だ」
「え、それもそれで結構な無茶ぶ―」
「い・い・な?」
「はいぃぃぃぃ!!」
いくら何でもその常中とやらは早すぎるんじゃないか!?だってまだ他に4つくらい呼吸法覚えなきゃならんのやぞ!?鬼畜じゃないといいながらやっぱり鬼畜じゃないか!!
そんな私の気持ちとは裏腹に、師匠の元に鎹鴉が手紙を足に括りつけて帰ってきた。そう、何故か人語を片言ながらに話すあの鴉だ。
「……神影、今日中に出立の準備をしろ。現風柱から返事が来た」
「あ、あの、手紙にはなんて…?」
「「御館様の命により指南は請け負う。しかし、才能なしと判断した時は問答無用で送り返す」だそうだ」
………お会いする前から物凄い重圧なんだが。
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