第5章 水の呼吸
「っ〜〜!おわったあああああ!!!」
物凄い達成感だ。今日という一日がとても長く感じられた。
「…まさか一日で習得してのけるのは大したものだ」
「ぴゃあ!?」
「一日で終了になるとは思わなかったが、それもお前さんの実力だろう」
(び、びっくりした…!音もなく現れるのやめてくれませんかねぇ!!)
再び足音ひとつなく背後に現れた鱗滝さんに既視感を感じつつも、無事に習得出来た礼を述べた。
「鱗滝さん、稽古をつけてくれてありがとうございました。お陰で習得できました」
「儂はほとんど何もしていないがな。まぁ第1関門突破といったところか。一度闇裂の元へ報告がてら戻ったらどうだ?」
「はい。そうします」
山を下るために立ち上がろうとしたが、何故か力が入らず立ち上がれなかった。
(…あれ?)
水の呼吸を習得できた安心感から気が抜けてしまったのだろうか。
「立てないのか?」
「なんか安心して腰抜けちゃったみたいです…」
恥ずかしいことこの上ないが、下手に隠しても仕方ない。
「って!ちょ、わわっ」
「静かにしていろ。舌噛むぞ」
「いいですって!少し休めば自分で歩けますから!!」
「煩い。小娘ひとり運べぬほど枯れてもいない」
(そういう問題じゃない!!)
今何が起こったかと言うと、座り込んで動けない私を俵担ぎしてきたのだ。この御老人。
そして小娘とはいえ人を1人担ぎながらなのにめっちゃ速かった。速すぎて怖かったです、はい。
そして鱗滝さんの小屋に戻ってきた私たち。
「…うぇっぷ」
「だしらがないぞ、この程度で」
「ずみまぜん…」
あまりの気持ち悪さに床に寝そべっていると、鱗滝さんは毛布を引っ張り出してきて私にかけてくれた。なんとお優しい。さっきとは大違いだ。