第4章 鍛錬
「よくぞ3ヶ月間耐え抜いた神影。今日から呼吸の習得を開始する」
「はい!」
ようやく呼吸の習得。これまで必死に耐えてきたのが報われた気がした。
「習得順だが、炎の呼吸を1番最後にする。他はやりたい順でいいぞ」
「じゃあ――」
私が選んだ習得順は水、風、雷、岩、炎の順。水の呼吸に関しては指導するに適した人がいるということで、私はある山へと向かった。
「ごめんくださーい!闇裂宇練の紹介で来た天斬神影ですー!」
山中にある小屋の戸の前で声を張り上げる。宇練さんから紹介された水の呼吸の育手、鱗滝左近次さん。水の呼吸はこの方から教わるようにと言われた。
「…あれ?いないのかな」
「儂に何か用か?」
「ひえっ!?」
音もなく突然背後から聞こえた声に驚き、変な声を上げてしまった。
「っあ、えっと、天斬神影と申します!私の育手の闇裂宇練から紹介状が来ていると思うのですが…」
「ああ、お前さんが天斬神影か。宇練からの手紙は把握している。ついてきなさい」
「は、はい!」
最低限の修行は既に終えていたおかげか鱗滝さんの速さにどうにかついていけた。移動する間、やはり彼の足音は1度として聞こえなかった。
必死に鱗滝さんについて行くこと数十分。ついたのは裏山の山頂付近だった。
「天斬にはここから下の儂の小屋まで1人で降りてきてもらう」
「わかりました」
「期限は日の出まで。道中は勿論幾つもの罠がかけられている。お前さんの実力を確かめさせてもらうぞ」
「望むところです!」
「では始め!」
その声と同時に、私は駆け出した。
(下っ!)
間一髪で落とし穴を避け、次の罠の気配を探知する。できるだけ罠にかからないように走ってはいるが、なかなか思うように体が動かない。
(こんなんじゃダメだ…。これでは体力なんてすぐに底をついてしまう。無駄な動きを無くさなくちゃ…!)