第4章 鍛錬
「くそっ!本当に罠だらけで嫌になるな!!」
開始地点からそれなりの距離を走ってきたはずだが今どの辺なのだろうか。罠を避けながら走っているせいなのか長く感じられる。
(そうだ…。罠の位置をおおよそでもいい、気配で探れないか…?)
1度足を止め、呼吸を整え、そして目を瞑る。
ゆっくりと深呼吸をし、周りの気配を探ることのみに集中する。
(なにも正確な位置を把握する必要はない。少しずつでいいんだ…。感覚を鋭敏にしろ…僅かな違和感も逃すな…)
暫くすると、すぅっと何かが変化した感覚が僅かながらに感じ取れた。
(もっと…もっと意識を研ぎ澄ませ…)
何が、とは言えないが私の中で確かな変化が今起こっている。段々と周囲にある木々たちがハッキリとしてくる。
――視えた。
閉じた目蓋の向こう側がモノクロに鮮明に視えた。
木々たちの間隔も、その1本1本の高さも、そして僅かな罠が仕掛けられている痕跡も。それらが鮮明に映し出された。
ゆっくりと目を開き、そして再び走り出した。
先程まで罠の位置を探るだけで一杯一杯だったのが嘘のようだった。
(罠の位置は大まかではあるけど把握した。あとは私自身がどれだけ無駄な動きを減らせるかだ…!)
それからはとにかく走って走ってひたすらに走り抜けた。
そして小屋が見えてきた頃には空がうっすらと白み始めていた。
「や、やっと着いたぁー!!」
勢いよく小屋の戸を開け、中にいるであろう鱗滝さんに報告する。
「どうですか!ちゃんと日の出までに戻りましたよ!!」
「…いいだろう。本当ならば今すぐにでも次の段階へ進めたいが、初日だからな。まずは休息を摂るといい」
「ありがとうございます…」
(このまま次の段階いこうとするとか鬼かこの人…)
こうして、私の1つ目の呼吸の習得が始まったのであった。
……最初なのにいきなり厳しくないですかね?
これからやって行けるのかものすごく不安である。