第1章 駐屯兵団にて
「ここだと思った」
透き通るような白い肌に、くっきりとした目鼻立ち。親友のアイ・サイカーだ。
上体を起こし彼女の方をむけば、兵士としての筋肉は保ちつつも細いスラリとした身体が目に入った。
「どうしたの?まさか、キッツ隊長が呼んでるとか言わないよね?」
それならば、見つけられなったことにして欲しいとお願いする所で、アイは言った。
「違う違う!その逆!エルヴィン分隊長がエリナのことを探してるって」
「なんで私を?」
「知らない。私が聞きたいよ。カルロがエリナを探してくれって」
そういえば・・。思い当たることが1つだけあった、あのメモ帳だ。毎回の変わり映えしない資料では意味がないと思い、この前の壁外調査出発の際に壁の上から見た攻撃成果を付け加えたのだった。出過ぎた真似だったのかもしれない。その時は役に立つかもと思ったが、これもまたキッツのお怒りを買う可能性だってあったのだ。しかし、それなら何故キッツではなくエルヴィン分隊長なのか。
「いい予感がしないわ。ごめん、見つからないって言っといて」
「何言ってんの!エルヴィン分隊長とお話したい女は何人もいるってのに!贅沢いわない」
手を引っ張られ子供の様に立たされたエリナは行くしかなかった。この親友のいうことは聞いておくかと思ったのだ。
正直なところ、エルヴィン分隊長に興味はない。確かに顔はいいと思うし三十路男の色気は感じる。優秀なのも知っている、だからこそ気に食わない。外見も良くて仕事もできるなんて卑怯ではないか、不平等だという思いがぬぐえない。
「へいへい。私はエルヴィン分隊長より、ミケ班長派ですけどね」
正直どっちでも良かった。2人とも『月刊 壁男』の抱かれたい男で上位に食い込む。勇敢な調査兵団、エリートな憲兵団はやはり人気である。そして不名誉なランキングの上位を飾るのは駐屯兵団が多い・・というのも通説ではある。