第1章 駐屯兵団にて
「始めるかの」
ピクシス司令の一声で壁外調査を終えた調査兵団と駐屯兵団が向き合った。今回、調査兵団からはエルヴィン、ミケ、カルロの3名が出席し、駐屯兵団からはピクシス、キッツ、アンカが迎えていた。壁外調査が終了するたびに、調査兵団から数名、駐屯兵団本部に向かい壁上固定砲などに改善余地はないか話し合いをするのが決まりだ。
「今回の壁外調査にあたり、駐屯兵団の協力には毎回感謝しております。私どもの援護隊に、精鋭部隊が加わって助けていただいたと部下から聞いておりますし、調査兵団団長からもその点、感謝を伝えてくれと承っております」
礼儀正しくエルヴィンが感謝を口にすると、ピクシスは黙って頷く。調査兵団と駐屯兵団は異なる団体だが、深い関係だ。
壁外調査時には、駐屯兵団の武器の力を借りざるを得ないし、駐屯兵団にとって調査兵団はある意味スケープゴート。駐屯兵団の怠けぶりは憲兵団も目を光らせるところだが、それより調査兵団の壁外調査という名の税金の無駄遣いの方が憲兵団にとって問題なのだ。駐屯兵団が多少ヘマをしても、批判の目は調査兵団に向けられる・・。調査兵団もそれを分かっているからこそ、駐屯兵団に協力を仰いでいる。