第5章 月刊『壁男』と夜会
「さぁ、着いたよ!むさ苦しい所ですがどうぞ」
扉を開けた瞬間に覚悟をしていたのだが、研究室とは反して汚れはひどくなかった。本は山積みだがそれ以外の余分なものがないのだ。聞くところによると、ハンジさんは殆ど研究室で過ごし酷い時は睡眠も研究室で済ませるらしい。そんな多忙なハンジさんが自分の為に時間を作ってくれたと思うと、後ろから抱き着きたいくらいだ。
「ハンジさん、トロスト区のパン屋で評判の焼き菓子買ってきました!あと果物でしょ、それと駐屯兵団本部の近くにある評判の雑貨屋さんで買った石鹸!香りはハンジさんのイメージで選びました!」
プレゼントは何にしようかと考えた結果、モブリットの「あの人お風呂に入らないから」という言葉を思い出したのだ。
いい香りの石鹸をプレゼントすれば、ハンジさんもお風呂に入ろうと思ってくれるかもしれない。
「うわぁ!豪勢だな!無理してない?」
エリナが持ってきたお菓子やプレゼントを手にとっては、嬉しそうに角度を変えて見つめるハンジをみて自分のチョイスは間違っていなかったと安堵した。
「そしてこれは、リヴァイ!」
鞄から取り出した10冊の雑誌、それは・・。
「これ、月刊誌の壁男じゃないか。ちょっとHな娯楽誌だろ?」
「そのとーり!」
得意顔のエリナにハンジは聞く。
「これのどこが、夜会の役に立つのさ?」
「ふふふ。わかってませんねハンジさん。壁男は下衆なネタやエロネタも豊富ですが、時々為になる事も書いているのですよ!」
ハンジは所々エリナの手でマーキングがしてある雑誌を手に取りページを捲る。
“レディのエスコートの仕方”
“気品あふれる会話とは”
“正装が男を輝かせる”
“会話の駆け引き”
“夜の舌技”
リヴァイが必要になると思う所に貼っている印と、エリナの字で書かれた追記。最後の“夜の舌技”は恐らくその横に特集されている“レディからの積極的な誘いを断る場合”に貼るつもりだった印が誤って貼られてしまったのだろう。
面白くなりそうな予感がしたので、その事は黙っておいた。
「じゃ私が後でリヴァイに届けておくよ」
リヴァイの喜ぶ顔が浮かんだのか、それ以外の悪だくみが浮かんだのか、ハンジは満面の笑みで雑誌を受け取り机の隅へと寄せた。
「エリナは座るだけでいいからさ!お茶会スタートだ!」