第5章 月刊『壁男』と夜会
"お茶会"と言えば聞こえはいいが、年齢の近い女性が2人、話すことは決まっていた。
「ねぇ!エリナは彼氏とかいんの?それとも結婚してるとか?憲兵団や駐屯兵団は結婚してる人多いでしょ?」
ハンジは3杯目の紅茶を自身とエリナに注いでいる。
「いませんよ、彼氏も旦那も」
「えー何で!?エリナは可愛らしいからいると思ったんだけど?」
もうすぐ30歳に突入なのに付き合った経験すらない...。それは恥ずかしくてハンジにも言えなかった。
「いやー、駐屯兵団の男にはときめかなくて」
嘘は言っていない。現にいないのだ。
「じゃ、憲兵団も調査兵団も含めていいや!誰か1人選ぶなら誰!?」
誰か1人...。即座に浮かんだ顔に気付かぬ振りをして
「ミケ班長かな!」
またもやミケを選んだ。困った時のミケ頼みとはこの事だ…いや、少し違う気がする。
「渋い!エルヴィンにいかない所がこれまた分かっている」
「分かっている、とは?」
「うーん、エルヴィンと恋愛しても幸せになれないんじゃないかな」
お茶菓子を口に放り込み、唸るハンジの顔は嘘を言っていなさそうだ。
「ミケはいいと思うよ!匂いは嗅ぐし変わってるし無口だけど面倒みがいい。それに立体機動の腕前や巨人の討伐数だってピカイチだ!」
年齢だってエリナと変わらないし… 楽しそうに話し続けるハンジに適当に相槌をうちつつ、エリナの心は別のところにあった。
幸せになれない…それは一体どういう事だろうか。取っかえ引っ変え遊んでるという事?それとも仕事熱心すぎるから?
自分には関係の無いこと…エルヴィン分隊長と自分がどうにかなる事はない。そう言い聞かせつつも、治まらない不安を必死に紅茶で流し込んだ。