第4章 地下のゴロツキ
演習場に辿り着いた時には、日差しも弱くなっていた。これから夜の訪れが早い季節になる。
少々丘の上でゆっくりしすぎただろうか。思ったより立体起動を練習する時間が取れなさそうだ。
エルヴィン分隊長が仰っていた小柄な男の影は見えない。
演習場といってもある程度の面積はあるのだ。もしかしたら、いるのかもしれないが、見渡す限りアンカーの音もしなければ気配もなかった。
「いずれ会えるでしょ」
立体起動を装着し宙に舞う。
この時間になると風に冷気を含むようになった。頬を撫でる風が心地よく数秒目をつぶる。
さぁ、今日は移動スピードを上げる練習をしよう・・。
ガスを勢いよく噴射させ木々を蹴り上げて進んでいく。
視界は良好、演習場の独り占めは気分がいい。
ちょっとここらで真似をしてみるか・・と宙返りを入れてみる。実は精鋭部隊が掩護中巨人の攻撃をよけるために、とっさに取ったこの行動が、固定砲の所から見ていてとてもカッコよかったのだ。
―――よし、私もできるじゃん!―――
そう思ったのも束の間、着地の際に上手く枝の上に乗る事ができず、空を見つめながら落ちていった。
身体中を枝にぶつけながらも、何とかアンカーを刺して地面に叩きつけられるのは防いだ。
危ない、危ない・・。やはり慣れない事はするものではない・・。冷や汗をかきながらも、気を取り直して移動を続けた。
大分深くまで移動しただろうか?そろそろ引き返してハンジさんに顔を見せようと身体を反転させると、刃のような鋭い風が吹いた。何事かと横を見ると、直ぐ傍に矢を射るような鋭い目。今まで人の気配なんてしなかったのに・・。
予想外の人影に思わず声を上げた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
距離をとり臨戦態勢に入るも人類同士戦うわけにはいかない。数秒見つめあうと、男は口を開いた。