第4章 地下のゴロツキ
予期せぬ大声に驚いたのはエリナだけではない。エルヴィンは目を開け身体を起こそうとしたが、こんなにも間近にエリナの顔があるのは想定外であった。このままでは、許されたもの同士しか触れあってはいけない場所が触れ合う!
焦ったエリナは思わず叫び、先ほどまで見とれていたエルヴィンの顔面を思いっきり手で押しのけていた。
「やべぇぇぇ!!」
キスを強請られる事は日常茶飯事でも、思いっきり拒絶された経験は記憶にない。
「酷いな」
苦笑いと共に、エリナの手を優しく顔から剥がす。
「え・・、あ、あ、あ!すみません、違うんです!違うんです!」
何が違うのかわからないが、敵意はありません、という意味にエルヴィンは受け取った。
釈明する間もなく背後から話しかける人物はマスロヴァだ。
「これはこれは、エルヴィン分隊長も!お2人で何を?」
一体何をしていたんだろう・・。サボっていました・・。馬鹿正直に言いかけるエリナを制し、エルヴィンは答えた。
「いや、私の新しい陣形案を彼女に見てもらっていたんだ。貴重な意見が聞けたよ」
「そうなんです、そうなんです。いや、偶然お会いしましてな!」
明らかに動揺しているのは、サボりがバレるのを恐れているからか、はたまた先ほどの事があったからか。
クスリと笑う声が横から聞こえた。
「私が兵士をいかに大切にしているか、よくわかっただろう?」
女性ならばコロリといく笑顔を向けられたが、エリナの脳裏にはとある懸念で一杯になった。
―――ひょっとして、寝ていらっしゃいませんでしたか!?―――