第3章 特訓とハンジ
駐屯兵団本部へつながる橋を渡り、馬で暫く平野を駆けると調査兵団本部へと辿り着く。駐屯兵団が管轄する演習場もあるが使う兵士が少なく手入れもされていない。また、調査兵団管轄の演習場の方が当然実践さながらなのもあり、精鋭部隊や一部やる気のある兵士は調査兵団の演習場を使っていた。
「モブリット!」
名前を呼ばれ振り向いた、人の好さそうな顔をした男の名はモブリット・バーナー。同じ“癖のある上官”を持つもの同士、交流を深めている調査兵団の友人だ。
「エリナ!資料の提出は上手くいったのか?」
最も、“癖のある上官”といっても彼の場合はその上官を女性として慕っている節があるのだが。
「多分ね。怒鳴られることはなかったよ。あと、おたくのエルヴィン分隊長に褒められた!」
「すごいじゃないかそれは!あの人に褒められたくて分隊長の部下は頑張るからなぁ」
―――本当に部下に慕われているのだな、あの分隊長様はーーー
我がことのように喜んでくれる友人の言葉に相槌をうちながら、そんな事を考える。
モブリットと別れ、演習場に向かうとすぐさま立体起動装置を装着し練習を開始した。
生い茂る木々にアンカーを刺し込み宙に舞う。訓練兵だったときは途端に身体が浮く感触が何とも怖かった。今では慣れてはいるが、ガスを射出させアンカーの抜き差しをしながら進む・・。気は抜けないし、この操作をしながら巨人を倒すのは容易ではない。自分の対戦スキルでは精鋭部隊に入ることはないし、調査兵団に行くこともないから関係のない話なのだけど。
リズムよく移動し、かたち程度にブレードを構えハリボテの巨人を討伐していく。
なびいた黒髪の先には長身の女性兵士の姿が見えた。
「うぉーーい!君がエリナかぁーい?」
お腹から出す声はその人物の力強さを感じさせ、内面から滲み出る明るさは調査兵団の兵士にはあまり見ないタイプだと推測できた。動きを中断し答える。