第3章 創り上げられる信頼
「いててっ…。」
「ごめんね、ちょっと我慢してね。」
幾多もの噛み跡が残る手から血を拭き取り、包帯を巻いていく。
それはただの噛み跡ではなく、噛みちぎった跡だ。
見ているこっちも痛々しい。
「すいません、シャーロットさん。迷惑かけちゃって…。」
「いいのいいの、私に出来ることはこれくらいだから。謝らなくていいのよ。」
最後の一巻きが終わりエレンの手を解放する。
エレンは申し訳なさそうに顔を俯かせ、謝罪の言葉を口にした。
結果的に言うと、エレンは巨人化できなかった。
やはりまだ巨人化を完璧にコントロールできているわけではないみたいだ。
まだ15歳という若さにも関わらず、人類の希望を一身に背負っているエレン。その責任の重さはエレンの表情を見れば判る通り、言葉では言い表せないほどのものだろう。
でも、エレンにはまだまだ世界が貴方にとって優しくないものではないと知って欲しかったし、楽しいものは楽しい、面白いものは面白いと思えるようになって欲しかった。
私はそんなに世界を卑下する必要はないと思うのだ。
もちろん人類を救うためにエレンの巨人化が確実になることは第一に達成しなければならないことだ。
だからといって、エレン自身の感情や自我を殺していい理由にはならない。
もっと世界は素晴らしいものだと知ってもらいたいのだ。