第2章 新たに迎え入れられる者
スタスタ歩いていく兵長の後を追っていると一つの部屋に入る。
でも、目立った汚れは一つもなく、清掃するようなところは無いように思える。
兵長、と声をかけると兵長が振り返って私を睨む。
なんか悪いことしちゃったかな…?
「すいません、兵長、掃除ならやり直しますよ…?」
「掃除なら必要ない。見て分かるだろ。」
「…すいませんでした。では、一体どうされたんですか?」
そう聞き返すと、チッと舌打ちをして、ズカズカと私に近寄ってくる兵長。
慌てて後ずさるも、腰に手を回され身体を固定させられる。
「あ、あの、兵長…!」
「お前は誰にでもこうやって触れさせるのか?」
「仰っている意味が…!」
顔も近づけられ、反射的に目を瞑る。
すると、兵長は少し溜息を吐いて、腰に回していた腕を解く。
そして頭を割と強い力で小突かれる。
「お前には警戒心が無さ過ぎる。」
「はっ…?」
「だからこうして簡単に男に迫られる。気を付けろ。」
"お前が誘ったのが悪いんだ!この淫乱娘が!!"
どうして今こんなこと思い出すんだろう。
兵長はただ心配してくれているだけなのに。
急に黙り込んだ私を不審に思ったのか眉間に皺を寄せている兵長に向かって頭を下げる。
「すいませんでした…。以後気を付けます。」
「…ああ、そうしとけ。……一応言っておくが、別にお前を責めているわけじゃねぇからな。」
「分かってますよ、兵長。ありがとうございます。」
上手く笑えているだろうか。
あんまり得意ではない笑顔を浮かべ、なんとかやり過ごす。
兵長はあんまり納得のいかない顔をしていたが、
それじゃ私は自室に戻りますね、と一言だけ断りを入れてその場を離れた。