第19章 帽子の男
一度に色んなことが起きてリサはポカンとしていた。
オレグが脱税していて自分に使った薬がまさかの違法ドラッグ。効果が強い薬なのか今でも身体が熱っぽい。
『うっ…』
目眩がする。
でも、オレグが捕まったならもう借金返済の為に身体を差し出す必要がない。
――ーリヴァイさん…私、やっと…貴方に…
『姉ちゃん、大丈夫か?』
残っていた数名の憲兵がベッドの横に立つ。
羽織っていたガウンをぎゅっと握り、大丈夫ですと笑顔を見せる。
ジロジロと舐めるように見られて気持ち悪い。
『あの…私は平気ですので…仕事に戻ってもらって大丈夫です』
軽くお辞儀をする。
若い憲兵数名はお互いの顔を見合わせ、ベッドを囲うように移動した。見下ろされているリサはただ恐怖しかない。
『姉ちゃん、まだ薬が効いててエロモードだろ?顔が誘ってるぜ?まぁ、これも人助けだな…薬を抜く手伝いしてやるよ』
『そうそう!人助け!さすが憲兵サマだろ?ベッドも床もビッチャビチャだし…楽しみだ』
『姉ちゃん、同時に相手するのと1人ずつとどっちがいい?娼婦だし何でもいっか!今は店の捜査でここには誰も来ないしな』
若い憲兵が口々に好きなことを言う。
さっきまで火照っていた身体は一気に熱が冷め、むしろ寒気が襲う。
『きゃっ!憲兵さんやめてください!』
2人がかりで両手足を押さえられ、1人は馬乗りになりリサの胸を鷲掴みして強く揉む。
『もう…やだぁ…。リヴァイさん…助けて…』
『おいおい~、若い連中がいないと思ったらまさかの被害者とお楽しみか~?』
『『た、隊長?!』』
ドアの前で帽子を深く被り、スラッとした背に憲兵のジャケットを着ていない男が腕を組んでいる。
リサは隊長と呼ばれた人の方を見る。
『嬢ちゃん…チビと知り合いか…?』
手をポケットに入れたまま、帽子から片目だけ覗かせリサを見てニッと笑う。
なんとなくその目はあの人に似ていた。