第19章 帽子の男
『ふっ、ははは!そんな証拠があるのかい?僕が金を隠し、ドラッグを使ったかどうかなんて…』
両手を上げ、引きつったように笑う。
1人の憲兵が軽く咳払いして続けて話し出す。
『はい、あります。先日我々の所に無記名の手紙が届き、この店と貴方の事を細かく綺麗な文字で記されておりました。金に関してはこの店の地下が怪しいとされてます』
リサはまさか?!と窓の方を振り向く。
窓の端に親指を立てたリヴァイの手だけが見え、固くなっていたリサの顔が綻ぶ。
話をしていた真ん中の憲兵がリサの方を見た。
部屋のいやらしい匂いやベッド周辺のシミ、熱があるかのような火照った表情で息をしているリサ。
『……こちらの女性に薬を使いましたね?』
『え……?』
『オレグ・ロヴォフ、貴方を連行します。そこで色々聞かせていただきましょう』
真ん中の憲兵は顎で合図をすると後ろの憲兵数名がオレグの腕に手枷を付ける。
オレグは抵抗するが敵うはずもなく、ずるずると廊下へ連れ出された。
『引っ張るな!!おい!俺のリサに触るなよ!!』
『オ、オレグ様……』
姿が見えなくなったオレグの声だけが廊下に響く。
『あの、クソ野郎…殺してやろうと思ったが予定よりも早く憲兵が来たな。余程クソ野郎に手を焼いていたってことか…。やり方は許せねぇが…本気でリサのこと…好きだったのか…』
リヴァイはそっと呟く。
ここに来ていた憲兵は予想より少なく、イザベル達が陽動していてくれているのだろうと理解する。
気になるが彼らを信じることにした。
『リサもここから出たらもう自由だろ。憲兵もすぐ去るか…。その隙にリサに開けてもらうか…』
体勢を戻し窓から部屋を覗くと予想外の光景を目の当たりにする。
残った数名の若い憲兵がリサに覆い被さっていた。