第13章 覚悟
地上の朝日が登る前にリサは目を覚ます。
早起きをし過ぎたが、背中に痛みがあり、また寝れる気がせず雑巾でいつもの掃除を始めた。
『痛たた…また…1人になっちゃった。私が来ないでって言ったのだから自業自得よね』
窓を拭き、サッシを拭き、棚の上を拭き…いつもの順番で拭いていく。
テーブルを拭いているとリサは思い出す。
『おばあちゃんもリヴァイさんもこの席でわたしが淹れた紅茶を飲んでくれていたのよね。おばあちゃんが教えてくれた淹れ方…リヴァイさん美味しいって言ってくれたよ…』
白いハンカチを頬に擦り寄せる。
『私、おばあちゃんが教えてくれた掃除も料理も出来るよ。裁縫だっていっぱいやって、おばあちゃん程じゃないかもしれないけど刺繍の腕も上げたよ。デザインも考えて、色んな布に刺繍して練習したんだから』
1人の寂しさを紛らわすように色々やってきた。
夢中になっていたら時間は過ぎるから。
だけど、刺繍をしていても考えるのはいつも同じこと。
―――リヴァイさんに会いたい。会って酷い態度だったのを謝りたい
『汚れてる私だと知られる前に謝りたい…。あんなに綺麗好きな人だから、きっと軽蔑するよね。触るなってもう手を握ってくれないね』
テーブルにポタポタと涙の粒が落ちる。
『でも!自分の決めたことだから後悔はない。返済のペースも増やしてもらったし早く終わらそう。リヴァイさんはもう会いたくないかもしれないけど、今までのお礼と一緒に……さよならをしなくちゃ』
涙を拭うとリサは掃除を手早く済ませ、自分の裁縫道具を出す。
『おばあちゃん、私の大切な人の為に作るから…これ使わせてね…』
リサは戸棚から1枚の布の切れ端を取り出す。
白く光沢のある品のある柔らかな布。
リサが持っている形見のハンカチと同じもの。
『おばあちゃんが身だしなみをきちんとするようにと言って作ってくれたけど、私のこと大切っていう気持ちを込めて作ってくれたのを知っているよ』
ハサミと刺繍糸を取り出す。
頭の中で形、デザインをイメージする。
『今度は私がリヴァイさんを大切に思う気持ちを込めて作るからね』