第13章 覚悟
リサはその日、1日中刺繍を施していた。
おばあちゃん以外の人に作るのは初めてであり、心を込めて丁寧に作る。
『……出来た。うん、イメージ通りね』
パッと広げて出来上がりを確認する。
緑と赤の糸を使ってイメージしたグラデーションの羽を2枚離れた位置に刺繍をした。
『私の思い、これで伝わるといいな。明日、渡しに行こう!迷惑かな…渡すだけなら、大丈夫よね』
持っている紙袋で1番綺麗な物を選び、作ったハンカチをしまう。
翌朝、リサはプレゼントを持って家を出た。
アジトへ向かう道のりは様々な人がいる。
身寄りのなさそうなお年寄りが寝転んでいたり、喧嘩をしている人。
兄弟なのか幼い子供が身を寄せあって座っている。
『これ…食べる?』
小さめのパンを2つ渡すと、ニコッと子供たちは笑うとパンを受け取る。
『お姉ちゃん!ありがとう!』
『パン、少なくてごめんね』
『僕達にはご馳走だよ!大事に食べるね!』
子供たちは手を振りながら近くの小屋へと入っていった。リサも笑顔で手を振り、2人が見えなくなると体をアジトの方へ向ける。
『あっ…ファーランさん…』
『リサ、優しくするのはいいけど君の食べるパンじゃなかったのか?』
苦笑いをしながら近づいてきたファーランはリサの目の前まで来ると、頭を軽く撫でた。
『お久しぶりですね!パンはいいんですよ。ファーランさんはどうしてここへ?お仕事ですか?』
『あ~うん。そんなとこかな!』
ファーランはローザを迎えに行ったものの、既に娼館にはおらず帰ろうとした矢先にリサを見掛けて声をかけたところだった。
『ファーランさん、リヴァイさんは今アジトにいますか?』
『あ、え~っと、どうかな?アジトへ行きたいの?』
ファーランはにっこり笑いながら冷や汗をかく。
『…はい』
嫌な予感がするな…とファーランは笑顔が引きつった。