第54章 鳥と花
『リサ、どうした』
『あ、いえ·····。えっと、知り合いに似た人がいたのでちょっとビックリしたというか·····』
『ほぉ、他人の空似じゃねぇのか?』
『·····かもしれませんね。調査兵団にいるなんて、聞いた事ないですし、たぶん似てるだけかもしれません』
『まぁ本人であれ違うやつであれ、そのうち何処かで会うだろ。ほら、鐘の音が何か分かったしとっとと行くぞ』
──エルヴィンさんにほんとに似てたなぁ。もし次会うことがあれば聞いてみようかな。
調査兵団の進む先をじっと見つめているとついに最後尾の兵士達が目の前を通り過ぎていく。
不安と気合いの入った顔に戦場へと向かう覚悟。
リサは彼らの無事を祈り、胸の前で手を組みリヴァイの方へと振り返った。
──エルヴィンさんに似た人どうかご無事で!
***
『エルヴィン、さっきから後ろばかり気にしてどうした?』
『あ、いや·····さっき知り合いがいたような気がしたんだ』
何だ、女か?とにやりとするミケにエルヴィンは苦笑いをする。
『それなら門が開く前に声でもかけてきたらどうだ?まぁ、普通の兵士には気が逸れるから言えないがな』
『いや、いい。もしかしたら男といたかもしれないんだよ』
『ふっ、それは残念だったな』
『おいおい。彼女には元から男がいるのは知っているし、どうこうするつもりはないよ』
『それは嘆かわしいな。ったく、今から壁外調査だってのに浮いた話なんて俺たち余裕だな』
『余裕なんてないさ。ミケ、団長のとこへ行って最終確認に行こう』
『あぁ。次期エルヴィン団長サマ』
──リサ、生きてまた君に会いに行くよ。もちろん友として·····な。
探偵さんなんですね!そんな台詞を言っていたリサを思い出し、次は本当のことを言おうとエルヴィンは手網を引いた。
***
街の人ほとんどが調査兵団の元へ行っているせいで周りはほぼ無人。
小さな花壇のある石階段の端にリサとリヴァイは座りアーヴェンの作った弁当を頬張る。
調査兵団が出るであろう壁の門の近くの鐘が鳴った。
数回鳴らされると、門が開いたのだろう。
兵士の魂の声と馬が走る地響きがこだまする。