第54章 鳥と花
賑わう人だかりはあれど、露店や活気のある店主の声はどこも響いていない。ざわざわ、ひそひそと話をしている様はとても祭りとは無縁な光景。
胸踊るはずの空気は冷めていて、それでいて笑顔でいる人は少ない。
『チッ、シケたツラばかりじゃねぇか』
『おかしいですね。お祭りじゃないならこの集まりは何なのでしょうか。全然楽しそうな雰囲気じゃないですね』
『辛気臭いやつらの集まりなんざ興味ないな。リサ、違うところに移動するぞ』
『あ、リヴァイさん待ってください!!』
リサは近くにいた人あたりの良さそうな恰幅のいい女性に声をかける。
『あの、すみません!私たち初めてここに来たんですけど今日って何かあるんですか?』
『他所から来たの。それなら今から何があるのか知らないのも無理ないねぇ。これから〈調査兵団の壁外調査 〉があるんだよ。全く、税金の無駄だってのに命を外に捨てに行くようなもんさ』
『〈調査兵団〉がこれから〈壁外調査〉に?!』
『そうさぁ。頭のおかしい集団だよ』
リサとリヴァイは顔を見合わせる。
恰幅のいい女性は友人の息子が調査兵団に入ってしまい、友人はショックで寝込み友人の代わりにその息子を見送りに来たのだと言う。
成績も真ん中ぐらいで親の希望の憲兵になれなかったとか。新兵の中では体格はいい方で体術には長けていたが座学は思わしくなくったらしい。
ここで初めてリサは兵士になるのに勉学も必要なのだと知る。
『お友達の息子さんの無事を私も祈っておきますね』
『あはは、お嬢さんいい子だねぇ。彼氏は仏頂面だけど!』
『チッ。おい、向こう側が騒がしくなってきたぞ』
ガラガラと車輪が地を転がる音が次第に近くなる。馬の軽やかな足音も聞こえ、馬に乗った集団がこちらへとやってくきた。
調査兵団だ!!と誰かが声を上げると周りはどよめきだした。
馬に乗った人物というのは群衆の中にいてもよく見えるもの。
大きな馬に乗った先頭集団が近づいてくると、リサの目は見開いた。
『(え?エルヴィンさ·····ん?)』