第53章 おかわりは2人で
『えっと、これはどういう状況で?』
『あ?お前を押し倒したんだ。手には触れてねぇから痛くねぇだろ?』
鼻と鼻が触れそうな距離。
熱を帯びているリヴァイの三白眼から目が離せない。
自分でした事とはいえ、負のインパクトが強かった出来事で顔色が悪くなっていたリサ。
しかしやっと好きな人と触れることが出来た安心や心地良さ、求められている嬉しさには敵わない。
『手の痛みなんて、どうでもいい。リヴァイさんに触れられるならどうってことないです』
鼻同士をツンっとくっつける。
痛いのは我慢するなとリヴァイがリサの鼻をカプっと噛むと、ふふふとリサが笑う。
その笑顔を見て、リヴァイはいつものリサだなと頭を撫でる。
生きていると耐えれきれず頭が働くより感情のまま動いてしまうことがある。
それでも支えて、支えられ戻してあげる。
『私を支えてくれてありがとう、リヴァイさん。もし、リヴァイさんの進むべき道があったらどんな場所でも私は応援します』
『...リサの道はあの野郎のとこに嫁ぐって言いたいのか?あんな気ぃ狂っといてか?』
あの娘は聡い子だよ。
そんなオレグの言葉を思い出す。
『もう...気がおかしかった話はネタですね。分かっているんですけどね、子どもじゃないんで』
『分かる必要なんてねぇ。知らねぇふりしとけ』
反論するであろう口を甘く塞ぐ。
隙間なく抱き合い、息さえも許さないとばかりに口付け、深く舌を挿し込む。
『んっ...んむっ...』
舌先を吸われ舐られる。
苦しいはずなのにそこから伝わる想いが感じられ、リサは多幸感に浸る。
漸く離された唇からはゆっくりと空気が肺に送り込まれ、胸は上下する。
血色良くなった唇から零れるものを指で掬う。
『...可愛いな、リサよ』
同じセリフでもこんなにも感じ方が違う。
子どもじゃない。
でも、今はリヴァイの言うように知らないふりをしよう。
リサはリヴァイの首に手を回した。