第53章 おかわりは2人で
『とうに知っておりますとも。ただ、ここで面倒事を起こすのは御二方にもよくは無いでしょう。リヴァイ様、老いぼれに免じては下さらぬか?』
『ちっとも老いてるように見えねぇな。まぁ、今はリサが気になるからどうでもいい。爺さん、あとは任せる!』
一言も喋らなくなったオレグには見向きもせず、リヴァイは部屋を後にした。
*
『リサ、入るぞ』
ディックの書斎から出る前にアーヴェンに聞いたリサの部屋。
いつかリサが帰ってきて、心地よく過ごしてもらうために父が用意していたという。
ノックを数回繰り返してみてもリサからの反応は無し。
確実にいることは分かっている。
リヴァイは鍵のかかっていない扉を開けると、ベッドがこんもりと山を作っていた。
『リサ、俺が来てるのに無視とは何なんだ...』
『.........』
『寝たフリをするな。お前は大人しそうな顔して寝相が結構悪いからな...この前だって...』
『起きてます!!!』
布団の山からくぐもった声。
軽く布団を引っ張るもリサは動こうとしないので、リヴァイは布団を引っペがした。
上質そうな軽い布団の中には小さく丸まったリサがぺしょぺしょと泣いていて、リヴァイは声に出さないようにため息をつくとサイドに座る。
『手ぇ、大丈夫か?』
『私、あの人死んでもいいって、思ったんです』
『...いいんじゃねぇか?』
『はい?いやいや...ダメでしょ。だからリヴァイさん止めたんですよね?なのに、死んでもいいって矛盾してません?』
丸まっていた体はびっくりするように起き上がり、目元が赤くなった顔をリヴァイに向ける。リサは自分がしようとしていた事を思い出したのか顔色が良くない。
『アイツであれ、誰であれお前に殺しは向いてねぇ。いつだったかリサに言ったはずだろ』
『や、でも、ほんとに憎くて、みんなと一緒に暮らして私だってもうゴロツキです』
『あんな灰皿なんかで殺ろうなんてゴロツキじゃねぇな。ただの気ぃ狂った女だ』
『ひどっ...。うん、たしかに気は狂ってましたね』
『分かってんじゃねぇか。あんなストーカーみたいな野郎はいつか俺が下すから、お前は安心してニコニコ笑ってろ』