第53章 おかわりは2人で
『ほぅ...それはまた随分な夢をお持ちで。あの状況を見ると、可哀想なぐらい嫌われてんじゃねぇか?』
『はは、彼女は聡い娘だから頭では分かっているさ』
『...頭がお花畑野郎だな』
『花ぐらい咲いていないと、僕の世界ではやっていけないよ』
リヴァイが鋭く睨みつける一方でオレグはにこやかに笑う。
この場所が地下街の一角なら頭ぐらい踏みつけてやりたいところだ。
『おっと、僕は頭は悪くないが腕っ節は強くないんだ。暴力は止めてくれよ?』
『はい、そうですか。な世界でこっちは生きてねぇんだ。てめぇ、リサに手を出そうとしてただろ...腕っ節は強くなくても歯ァぐらいは食い縛れることは知ってるな?』
身長はリヴァイより高い。見上げてしまう身長差でも軽々と胸ぐらを掴む。
シワひとつないシャツがリヴァイの手によりクシャリとする。ケホッとオレグが咳き込むとリヴァイはさらに首元に圧をかける。
『ゲホッ...や、めっ』
『あぁ?リサもてめぇに止めてと言ってたのに止めなかったよな?』
オレグの顔を範囲内まで引っ張りこむとリヴァイは拳を作った。
あとは振りかぶるだけ。
『リヴァイ様、お止め下さい。ここほディック様のお舘でございます。どうか、ここは手を下げていただけますかな』
『爺さん、あんた...分かってたが相当やるよな』
『あ、あぁ、執事か...何考えてるのか分からないと思っていたが物分りはいいみたいだ』
オレグに集中していたとはいえ、アーヴェンはいつの間にかリヴァイの手を掴んでいた。
アーヴェンの言っていることは流石のリヴァイでも理解出来る。盛大な舌打ちと共に突き飛ばすようにオレグを離すと、オレグは咳き込みながら後ずさりをしていた。
『物分り?オレグ様、勘違いされてはいけませんよ?私が従うのはディック様、その次はリサ様。ディック様は現在外出中。それならば私はリサ様に従うのみ。リサ様はリヴァイ様を案じてらっしゃいました。ならば、リヴァイ様をお守りするのが今の私の任務でございます』
『オマモリって...そんなか弱くねぇよ』