第53章 おかわりは2人で
出会った頃だったか。
リサとリヴァイが初めてお茶を交わしていた時のこと。
リヴァイがゴロツキと知り驚きはしたが、不思議と怖くはなかった。
条件が違っていたら自分もゴロツキになっていたかもとリサは言った。
それでもリヴァイはお前はそんなことしないし、出来ないと。
護身用に持っていたナイフはいつの間にか持たなくなった。きっとそれはリヴァイがずっと傍にいてくれたから。見えないところでも守ってくれた。
『私だって・・・もうゴロツキっっ』
ブンッッッ
遠心のかかる重い音。
バンッ!!!
鍵のかかっていない部屋の扉が勢いよく開く。
『リサ!!!!』
足に重心をかけると質のいい絨毯が焦げそうな程の力を入れ絨毯を蹴る。
そのまま蹴られたのは─灰皿。
呆気なくリサの手から離れ、灰皿はリサの父親の書斎の花瓶を割って床に落ちた。
『おや?大きな物音がしたと思いきや・・・ディック様の書斎の花瓶が割れてるではありませんか?』
何食わぬ顔でアーヴェンは部屋を覗く。
割られた花瓶。空になった自分の手を交互に見ると、急に手が震え出す。あんなに強気で、覚悟を決めたのに。
リヴァイとアーヴェンの登場でオレグはパッとリサから離れ、何食わぬ顔で立ち上がると身嗜みを整える。
体の重みがなくなったリサも起き上がり、じんじんと痛む手を押さえ、とんでもない事をしようとした自分が信じられないと言った顔になる。
その様子をじっと見たリヴァイはリサの手を引き、オレグから離すと痛そうな手の甲を優しく撫でた。
『リヴァイさん、私とんでもない事をしようとしてた。どうしよう・・・』
『・・・理由はあとでだ。俺は少し話してくるから爺さんに手当てしてもらえ』
*
『やぁ、ゴロツキくん。久しぶりだね、元気かな?』
『あぁ、健康には自信がある。てめぇものうのうと楽しんでるみてぇだな。人をあんな場所に閉じ込めやがって。』
『君が出てきたのは想定外だったよ。あの執事が、君を出したのだね。んー、リサが辛辣になったのはゴロツキくんの影響かな?彼女はミッシェル家の令嬢なんだ、言葉遣いは気をつけないと。・・・僕の妻になるなら尚更ね』