第53章 おかわりは2人で
『リサ、改めて聞こう。私と一緒になる気はないか?君の幸せはどこにたどり着く?』
オレグは再び手を差し出す。
大きな苦労をせずにここまでの地位に登り上がり、水仕事などしたことがないだろうと思うような綺麗な手。それでも食に困ることは無い。
リヴァイは地下街のゴロツキで汚れた仕事も違法な仕事もこなす。
それでも家族のように思う仲間の為に手を汚し、リサの為に無茶もする。
血の匂いがする日もある。
どちらが、ただの平凡な女の幸せの道か誰に聞いてもわかる。
父親もそうは言ってもリサの幸せを願っている。だから仕事のことは言わなかった。
『今まで会っていなかったとはいえ、父です。父の仕事のことが気にならないわけではありませんが、父は私に選ぶ権利をくれています。強制はしていません・・・だから、あなたとは一緒になりません』
『・・・後悔しないかい?』
『私は後悔のない選択をします。お金だけが幸せじゃない。汚れた世界でもたった1人の人がいるだけで幸せになるのです。父のことは・・・私にはどうすることも出来ません』
『君は少し抜けているとこもあるが、賢い女性のはず。そうか、リサの選択は・・・そうなんだね』
憐れで可哀想だとリサを見下ろす。
そこまでアイツに洗脳されているのかと。
*
『や、やめてっ・・・私に触らないでっ!』
『リサ、君は騙されているのに気づいていない。彼は君がミッシェル家の人間と知って、いずれ手に入る君の財産を狙おうとしているんだよ』
『違う!リヴァイさんは、そんな人じゃない!』
『なら・・・君に恐怖を与えたりしないかい?彼は・・・ゴロツキだろう』
『きょ、恐怖・・・?』
返り血のついたあの日のリヴァイが脳裏に蘇る。
あれは仕方がない。そう言い聞かせてきた。
『おや?その顔は?思い当たる節でもあったかな?』
『な、ないわ!あなたこそ、納めるものも納めず、こそこそと裏で動いているんでしょう?!狡い人っ!』
『はは、ほんと・・・リサは可愛らしいね』
何を言っても無駄だろうとリサは立ち上がる。
しかし、握られていた腕が引っ張られソファに倒れ込んでしまった。
『こんなに非力で強情で・・・考えが変わるように、手解きをしてあげないと・・・ね』