第53章 おかわりは2人で
『これか・・・?・・・何か違うな・・・いや、こっちだろ』
慣れないことに頭を搔く。
この際リサに直接探してもらった方が早いが、リヴァイにも意地があるのだ。
指でなぞりながら探している花を探し続ける。
それから少しすると屋敷の外が騒がしくなった。
馬車を引く馬の鳴き声と数人の男の声がする。
そのうちの1人の声に聞き覚えがあった。
『チッ・・・何であいつがいやがる・・・』
窓の壁に体を寄せ窓から覗くと胸の悪い記憶が蘇る。
『・・・オレグ・ロヴォフ』
ぽつりと呟いた距離は決して聞こえないはず。
それでもタイミングなのか、オレグはリヴァイのいる部屋の方を見上げニヤリとする。
リヴァイは眉間に皺を寄せ舌打ちをするとカーテンを締め、散らかした本を片付ける。
残っていた紅茶を飲み干し、ここは無用だと部屋のノブに手を掛けた。
『・・・っ、鍵?!・・・おいっ!爺さん!!近くにいるんだろ!』
『申し訳ありません、リヴァイ様。今は・・・開けられません。今は・・・まだ・・・』
『はぁ!?爺さん、オレグが来たのは知ってるよな?リサに会わすわけにはいかねぇ。どういうつもりか知らねぇが、ここを開けろ!』
『リヴァイ様、耐えてくださいませ』
『・・・おい、ドアを蹴破っていいか?』
『・・・・・・』
リヴァイは長い長いため息を付くと、大きく腕を振りかぶり大きな音を立ててドアを叩いた。
下唇に歯を当てる。
『・・・・・・爺さん、俺は気が短い』
『承知しました。・・・お飲み物のおかわりは?』
『いらねぇ。紅茶はリサと飲む』
2度目の長いため息。アーヴェンの気配が消えるとリヴァイは空になったティーカップを眺めた。