第52章 初めましてと再会
『おぉ!それは良いことだね。リサの母親も働き者だったし似ているだけはあるなぁ』
目を細め嬉しそうに笑う父親にリサは黙る。全てが嘘ではないところに癖がある。
オレグも便乗してさり気なく褒めてはいるが、際どく話すものだからリサは冷や冷やだ。
『お、お父様・・・あの、お仕事忙しいのでは?急に訪ねることになったのでご迷惑おかけしてるのでは・・・』
『ん?まぁ、そうだな・・・実はこの後商談が1件控えていてね・・・折角娘に会えてゆっくり食事でもと思っていたんだが、すまないね』
『とんでもないです!また、食事しましょう!で、では、そういう事ですしオレグさんにはお引き取りをお願いしましょう』
パンっ!と手を叩くと思っていたよりも大きな音が鳴り、いかに自分が早くこの場から立ち去りたいと思っていたのか分かる。
父親が商談で部屋を空けるなら全員この部屋を出る必要があるはず。
2人っきりになる前にリサはすぐにでもリヴァイの元へ行こうと決心する。
『リサ、来たばかりのオレグさんにはゆっくりしていってもらいなさい。2人は久しぶりに会ったのだろう?アーヴェンにお茶を淹れさせたら2人っきりにするから、ゆっくり談笑でもしていなさい』
『お心遣いありがとうございます。是非そうさせてもらいます。なぁ、リサ?』
ソファに座るオレグはポンポンと横を叩く。
それは横に座れの合図。
手で指示されることは以前の関係性から知り得ている。
靴底に鉛が入っているように足が動かないリサにアーヴェンは小さくリサの名前を呼ぶ。体片側だけ鳥肌が立つような寒気に耐えながらリサはなんとか足を動かした。
『はは、リサは本当に可愛らしいね』