第51章 陽が指す方へ
「はぁ・・・はぁ・・・待って!!」
子どものスタミナは底知らず。
リサには聞こえないが、目の前を走る2人は何やら騒ぎながら走っている。
2人というか、主に騒いでいるのは少年の方。
リヴァイを置いてきてしまったことも気になるが、リヴァイの帰りを待つほどの余裕もない。
折角一緒に来てくれたリヴァイのためにも、リサはお金を取り戻したい。リサがお金を盗られたことはリヴァイはきっと咎めない。それどころか、今こうやって1人で追いかけていることの方がよっぽど叱られる。
「それでもっ・・・ファーランさんやイザベルだって行きたいのはずなのに我慢して・・・私を送り出してくれたのに、すぐ帰れないっ。お願い!君達!返して!」
リサの顔をチラ見した前の2人はまだ喋りながら走る。
不慣れな地上の地面に躓きそうになりながら、人混みを避けていく。
立体機動装置の為に体力つけていて良かったとリサは思う。
それでも、走り続けてるのは限度がある。
「ふむ。スリとは良くないですね」
「アーヴェンさん!!!」
角を曲がるとアーヴェンはいつものにこやかな表情をしながら、男の子の首根っこを掴み少女は小脇に抱えられていた。
離せと暴れる少年や少女の動きにビクともしないアーヴェン。
「くそっ!離せ!何なんだよ!?この爺さん!」
「エレン・・・!私が助けるっ!」
「おやおや・・・元気なお子様ですね。元気なのは宜しいですが、スリは悪いことでございます。親御様へ報告がてら憲兵へお連れしましょうか」
首根っこを掴んだ手を持ち上げアーヴェンは少年の目をじっと見つめる。真っ直ぐとした信念のある翡翠の瞳はゆらゆらと揺れていた。
──常習的にスリをしている目ではないですね。
「アーヴェンさん・・・あの、そこまでしなくても・・・。お金も取り戻せましたし、何か訳があるのかもしれません。ねぇ、君は何でお金を盗ったの?」
一定の距離を取りながらリサは尋ねる。
「お、俺・・・父さんから預かってたお金落として・・・それで・・・」
「エレンは不可抗力。間違いは誰でもある」
「お、お前にフォローされたくねぇ!」