第51章 陽が指す方へ
『じゃぁ、ありがたく頂きますね』
リサはずっしりとした林檎を2つ両手に持つ。真っ赤に実った林檎はとても瑞々しい。
美味かったら今度は買ってくれよ!と、最後には商売魂を見せリサは是非!と笑った。
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『地上の人達ってみんな明るくて笑顔ですね』
すっかり気分が上がったリサは鼻歌を歌いながら貰った林檎をシャリっと齧る。
想像していたよりも甘く、真ん中には蜜がたっぷりなのだろう。
『太陽は大事だ。それは植物だけではなく、人間も・・・な』
『日光不足の地下には足が悪い人がたくさんいますから・・・ね』
比べれば比べるほど地下と地上との暮らしの違いを目の当たりにする。
ここがシーナということもあり、確かに裕福層ではある。
痩せ細った子どもはおらず、物乞いをしている者はいない。
なんなら、先程の店主のように気前がいい人もいる。
『リサ、お前は別に地下の住人ではあるがリサが気に病むことではねぇ。産まれた運命ってやつだ』
『運命・・・。変えようが無いことなんですね』
『それでも生きていかねぇとな。それが、変えようがなく残酷でも・・・』
『私はリヴァイさんに会えたことは運命だと思ってます。残酷なことがあっても、これだけは私の運命で幸せなことなんです』
歩いていた足を止め、真っ直ぐリヴァイを見る。
きっとリサの愛はリヴァイに届いているし、きっとリヴァイもリサを想っている。
確信に近いのに確信できない。
そこだけは非常に辛い。
『おめでたいやつだな』
『ちょっとー、失礼じゃないですか?!』
『まぁ、落ち着け。随分と街中を歩いたな・・・そこに紅茶の店があるから買ってくる。そこのベンチで待ってろ』
ぶーっと拗ねたようにリサは林檎を持ったままベンチへと向かう。
その後ろ姿を見ながら、
『俺もお前と出会えたのは運命だと思っている』
リヴァイはボソッとごちた。