第51章 陽が指す方へ
階段を上がり地上へ近づくにつれ四角い光が強くなる。
そして、暖かい。
1歩1歩と前へ進めていると、次第に地上からの騒音も聞こえてくる。
知らない場所への期待と不安で後ろを振り向くと、リヴァイは静かに頷く。
間違いのない光に目を細め、腕で影を作った。
『ここが、お前の親がいる地上だ』
最後の1段を上るとリヴァイはリサの肩に手を置く。
ゆっくりとリサは腕をおろし、目の前の建物を目で辿り空を見上げる。
『わ・・・あ・・・』
4、5階建て程の建物の間に広がる青々とした空に白い雲。地上にいて空は青いとは聞いていたが、こんなに澄み切っていて、ふわふわな綿のようなものが空に浮かんでいるのは不思議な光景だった。
『鳥・・・』
自由に空を飛ぶ鳥。
地下に迷い込んだ鳥は何度も見てきた。
しかし、迷い鳥は暗いジメッとした地下を自由に飛べない。
運が良ければ、優しい者によって地上へ戻してもらえるだろう。
運が悪ければ、逃げられず死に絶えるか、または地下の住民の食料となるか。
リサはどちらの鳥になるだろう。
窮屈な地下でこれまでを過ごしてきたリサには地下にいるのが当たり前だった。
地上への憧れはないわけではないが、大切にしたい人がいる。
その人たちを置いていく程の気持ちは今はなかった。
しかし、こんな空を見ると・・・いいなと思う。
『よく、晴れてるな』
ポケットに手を突っ込み、眩しさで目を細めながら同じように空を見上げるリヴァイ。
『・・・地上はいいだろ?』
『そ、うですね。空が綺麗・・・』
何かを見抜かれたような視線にリサは目を反らす。
地上への憧れはもってもいいもの。
それなのに、過去の自分に嘘をついているような気がしたリサは地下がある地を見た。