第50章 それもまた貴方
『んっ・・・んーっ!』
『はっ・・・上等な器だな』
小ぶりの器・・・口に何度も果実酒を含ませリヴァイはその度リサの口の中を吸う。
口端から果実酒が零れないようにリサは神経を尖らす。何度も繰り返し、果実酒が無くなる頃にはたいしてアルコールを摂取していないのに体は酔ったように熱くなっていた。
久しぶりに溢れるこの感情にリサは嬉しさを感じた。
『・・・リサ、泣いているのか?少しやり過ぎたか』
『いえっ・・・。私・・・リヴァイさんが怖くなっていたんです』
『・・・知ってる。あの件以来、リサはあまり俺に近づこうとしなかったからな。あの時の俺はイカれていたとはいえ、・・・お前に冷たいことを言った』
『きっとあの時のリヴァイさんもリヴァイさんだったんです。私はちゃんとリヴァイさんを見ていなかった。呆れられたと思ったし、もしかしたら私に触れて貰えないかもと・・・』
『そんな訳ねぇだろ。俺はずっと・・・お前に触れたかった。今夜俺の所に来るって言われて悪い気はしなかった』
『・・・それは、私に触れられなくて寂しかったってことですか?』
人差し指でそっと涙を拭いリヴァイを見つめる。
リヴァイが寂しいというワードを言うわけが無いのは知っているが、少し加虐心で聞いてしまう。
リヴァイは腕を組み何かを考えている。
『ごめんなさい。リヴァイさんは寂しいとか辛いとか弱音を吐く方ではなかったですね』
『・・・寂しかった』
『え?』
拭っていた指が止まる。
『リサに触れられなくて寂しかったと言っている』
『・・・リヴァイさんっ!!』
リサは嬉しさでリヴァイに抱きつき、その反動で後のベッドに倒れ込む。ふわりとベッドにスプリングすると、リヴァイはくるりと反転してリサを見下ろした。
『笑ってんじゃねぇ』
『だって、嬉しいんです。リヴァイさんがそんな事言ってくれるなんて思わなくて』
『おい、お前が聞いてきたから答えただけだ』
そうですね。とくすくすと笑うリサにリヴァイは軽く舌打ちをした。リヴァイの照れ隠しである。