第50章 それもまた貴方
『・・・・・・寝てたしまってたな。ん?』
少し眠っていたファーランは目頭を押さえながら背筋を伸ばすと、ぱさりと肩から何かが落ちる。
「・・・リサがかけてくれたのか」
椅子の足元にブランケットが落ちていて、リサのブランケットでありリサが掛けてくれたものだとすぐに分かった。
当の本人のリサはテーブルに突っ伏して寝ていて、肩には何も掛かっていない。
ファーランは苦笑いをしながら、自分がかけられていたブランケットをリサの肩に掛けてやった。
穏やかに眠っているリサを見やると、いつの間に帰ってきていたのかという疑問と、てっきりリヴァイと過ごしているとファーランは思っていた。
『・・・リヴァイ。家の外にいるんだろ?』
『・・・あぁ。ファーランにはバレるか』
ファーランがドアを開けてやると、リヴァイがそこにはいたがどうも髪の毛が湿っている。
滴りはしていないが髪も少しペタンとなっていた。
『リヴァイ、髪の毛・・・濡れたままか?』
とりあえず入れば?とファーランはリヴァイをリサの家にいれる。
『・・・シャワー浴びてたからな。リサに待ってろって言ったのに、出たらコイツはいなくなりやがった。無事に帰ってるのか心配でそのまま飛び出してきた』
チッと舌打ちしてリヴァイはボサついた髪を掻き上げながら手ぐしで戻す。
ファーランがタオルいるか?と聞くがリヴァイはタオルがあってもなくても同じだからと断った。
リヴァイが2、3歩進むとリサが突っ伏して寝ているのが目に入る。
『・・・・・・リサを怖がらせてしまった』
『そんな事だろうと思ったよ。久しぶりの人殺しだったんだろ?それなら・・・まぁ、気分もそうなるの仕方ない』
『シャワー浴びて落ち着いたら、コイツに冷たい事ばかり言っていたと悪い気がした』
『・・・服はそのまま?』
『帰ってすぐにリサに会った。返り血が浴びた服はもう捨てたからな』
『それはいいよ。リサ・・・、俺たちを怖がるかな』
『さぁな・・・』
リヴァイはあの時のリサの顔を思い出す。
地下の弱い立場の人間の顔であり、恐怖する顔。
人間を地に這わせるのは容易い。
そこから顔を上げて笑ってもらう術はリヴァイはまだ知らない。