第50章 それもまた貴方
『リヴァイさん・・・ケガは・・・?』
『かすり傷程度だ。リサこそ、イザベルを介抱してくれて助かった・・・』
スっとリサの頬に触れようするが、リサは1歩下がる。リヴァイの手は宙に浮いたまま。
何かを察したリヴァイはそっと手を下ろし、リサに近づく。
『あ・・・あのっ・・・私、イザベルのとこに戻らないと・・・』
『お前・・・俺を怖がっているな。手が震えている』
言われるまで気が付かなかったリサは、ハッとした顔で手を後ろに回す。
リヴァイがした事は、決して悪いことではない。リサとて、イザベルがされたことには腸が煮えくり返るほどだ。
仲間を大事に思うリヴァイがした”御礼”は当たり前。
だから、リヴァイに対して怯えているのは筋違いだとリサは自分に言い聞かす。
『リサは俺が善人や神とでも思っているのか?』
『え・・・?』
『前にも話したことがあるはずだ。俺は人を殺す。理由もなく殺しはしねぇが、理由によっては殺す』
『で・・・でも、リヴァイさんは私が殺さないでって言ったら殺さなかった』
『リサの目の前で殺すのを躊躇っただけだ。今回は例外だ・・・許せねぇ』
顔に影を落とし、眼光が増すリヴァイにリサは手をぎゅっと抑える。
『俺は窃盗団だ。それもこの辺を牛耳るほどのな。・・・リサも俺の近くにいるならこのぐらいで震えるな』
『───っっ』
手についた血痕を拭いながらリヴァイはため息をつく。
リヴァイの雰囲気がいつものリサに対するものと違い、リサは泣きそうになる。
冷たさを感じる言葉にリサは黙るだけ。
殺しの後の殺伐とした情緒のリヴァイは更に辛辣。
『俺はお前みたいに生易しいやつじゃねぇよ』
いつもと違うリヴァイにリサは戸惑い、本来のリヴァイの姿なのかもしれないとリサは思う。
久しぶりに人を殺したリヴァイの感情は冷めていた。
リーダーとしてのし上がったリヴァイはこうなのだと。
『うっ・・・ぐすっ・・・』
リサはついに涙が零れた。