第49章 通行証と髪留め
────イザベル!!
リサの悲しい顔は見たくない。
涙を流す理由は俺が与えるもの以外認めない。
目を閉じ、何度も見たリサの笑顔で上書きする。
────兄貴~!!
人懐っこい笑顔に男勝りだが優しいやつ。
リサを姉のように慕い、リサもまた妹のように接してくれる。
俺の仕事にはイザベルが欠かせない。
『イザベルの体を痛めつけ、リサの心を痛めつけた。・・・・・・俺の仲間への詫びは・・・入れねぇとな』
地下街。最下層。
治安が最も悪く、地上よりのアジト付近よりも醜悪。
同じ地下街だというのに、より一層暗い。
フードを深く被り、身の気配を消す。
『この場も久しぶりだな。仕事でも正直に言うとあまり入りたくないところだ・・・胸糞悪ぃ臭いがする』
つい先日。
依頼主・・・それはとある貴族。
窃盗団であるリヴァイたちへの依頼をするのは、裏社会に通じる者。
依頼主が裏で取引していた珍しい鉱石を地下の何者かに奪われた。その何者かを探れというのが依頼だった。
『その何者かを捕まえるのが憲兵・・・サマってか。大層楽な仕事だな、憲兵ってのは・・・』
報酬はたんまりと払われるが、称えられるのは憲兵。
名誉や誉れなどリヴァイは欲していないが、クソッタレな連中だと舌打ちをする。
依頼主の依頼を見事に探し当て、あとは報告だけとなっていた。
しかし、運が悪くイザベルが盗んできたのはその一味から。
依頼主からの奪われたものではないが、そこそこ値が張る髪留めであった。その為、奪い返しに来たであろう奴らにイザベルは襲われた。
命があっただけでもマシだと思えるのは男相手に思うことであり、女相手には言えない。
ましてやイザベルのような襲われ方をされたのであれば尚更。
『・・・ここか』
リヴァイは隠していたナイフを構える。
『イザベル・・・リサ、お前たちの分も俺がコイツらを潰してきてやる・・・』