第49章 通行証と髪留め
『イザベル!!心配したのよ!!』
リサはイザベルに駆け寄り、抱きしめる。
しかしイザベルは言葉を発さない。
それどころか、つんっと鼻につく臭いがする。
バッと肩だけ触れたまま離れると、イザベルの2つ結びの片方がない。もちろん、リサのあげたシュシュも片方がない。
衣服も汚れ、はだけている。
痣や痕。葉巻の匂いもした。
ボトムスは僅かに色が赤くなっている。
『──────っっ!!!!』
イザベルは何も言わない。
焦点だけが合っていない。
リサはギュッと抱きしめると、何も言わずに手を引き自分の部屋まで引っ張って行った。
泣いたらダメ。
リサは滲みそうな目が乾くようにと目を大きく開けながら歩いた。
『・・・・・・おい、ファーラン』
『あぁ、分かってる。目星は付いてるんだろ?』
『あぁ・・・今日しっぽを掴んだところだ・・・』
『・・・イザベルは・・・』
『リサに任す。あれはアイツが適任だ』
リヴァイは自室からナイフを取りに行くと懐に忍ばせる。
『・・・・・・リヴァイ、そのナイフ・・・久しぶりだな。まぁ、当たり前か・・・』
リサと出会ってからリヴァイは格段と仕事のやり方が変わった。盗みはするが、不必要に危害を加えない。相手がナイフを持っていても元々の素質がある体術でノックアウトさせる。立体機動装置もあり、仕事がしやすくなったのもあり極力殺しをしていない。
血に濡れた姿をリサに見せたくない、それだけの理由。
そんな甘いことを言うなとリサに出会う前ならリヴァイも思っていた。
暮らしにくい地下街。
そんな地下街でもリサには少しでも快適で笑顔で過ごして欲しかった。
護身用のナイフよりも一回りもあるナイフ。
刃の部分が鋸のようで刺しても、切っても致命傷。
念の為に研いでいたとはいえ、出来るならリヴァイも使用したくはなかった。
『たが、そんな事を言ってられねぇ。俺の仲間を傷つけた落とし前はつけさせる・・・!ファーラン、リサ1人だと心配だからここに残れ。・・・俺が1人で行く!』
『は?!ちょっ・・・リヴァイ!!リヴァイ!!!』
リヴァイは黒いコートを羽織るとアジトを飛び出した。