第49章 通行証と髪留め
地上へ上がる日を決めると、あとはそれに向けて準備をするだけだった。
リヴァイは残っている仕事を片付けたり、他の仲間への報酬を渡しに行くなど忙しくしていた。
ファーランもリヴァイがいない日があるとなると、メインで動くのは自分というのは理解していて、積極的に仲間との信頼関係を築いていく。
当のリサはいつも通り。
自分の仕事はきっちりこなす。
ただ、やはり少し浮かれている。
『理由はともあれ、初めての地上だもんね。地下だから分かりにくいけど・・・地上だと・・・私ってやっぱみすぼらしかったりするのかな』
ロング丈のベージュのスカートに白いブラウス。
清潔に保ってはいるが、いささか古い。
薄暗い地下街だから肌の調子が少し悪くても誤魔化せるが、眩しい太陽の元だと明らかに自信は無い。
かと言って、そんなところにお金を使う余裕はさすがにないのだ。
『おーい!リサ~!』
『イザベルおかえり!また、服が汚れてるけど大丈夫・・・?』
『あー・・・少し手こずっただけ。それよりも!さっきキラキラした髪留め手に入れたんだ!リサの髪に絶対似合うと思ってな!折角地上へ行くんだし、少しはおしゃれとかリサしたいかな?って!前に俺に作ってくれたシュシュのお返しだ!!』
へへっ!と鼻の頭を掻きながら、照れくさそうにイザベルはリサに渡す。
金属の留め具に、宝石のようなキラキラとした石が散りばめられている。
『これ・・・宝石じゃない?!こんな高価なもの貰えないよ!!』
『いいんだって!まぁ本物か分かんねぇけどな~。でも、これ付けてもっと綺麗になって地上を楽しめよ!折角の機会だからさ、な?』
『イザベル・・・男前過ぎて私・・・惚れちゃうよ・・・』
『あはは!それは兄貴に殺されるなっ!』
『イザベルが女の子でよかった!』
『俺は女じゃねぇっての!』
『ふふっ、そうねっ』
『そうそう!じゃぁ、俺仕事残ってるから行ってくる!』
『忙しいのにありがとう!イザベルの好きな物作って待ってるね!』
『やりぃ!!早く帰るから!いってきまーす!』
イザベルのあどけない笑顔をリサは見送る。
しかし。
その日、イザベルは夕食時になっても帰ってこなかった。