第49章 通行証と髪留め
『いくら元の家に帰らないとは言っても、地上の風景や景色は多少なり気になるだろ?』
『そ・・・うですね、はい』
嘘はつけない。
地上への憧れはないわけではない。
おばあちゃんから聞いていた、空の青。自由に飛ぶ鳥。
風に揺れる草花。
本も乏しい地下街では、そういった話はでさえ子供心はわくわくしていた。
───もし、地上の景色を見て・・・私の気が変わるかもしれないってリヴァイさんは思わないのかな
ズッ・・・と紅茶を飲んでいるリヴァイと目が合う。
リサは慌てないふりをしながら目線を逸らし、ご飯作りますね!と椅子から立ち上がった。
『・・・・・・・・・』
『・・・リヴァイ、いいのか?』
『あぁ。俺が決めたことだからな』
イザベルが手伝う!とキッチンへ入り、2人で楽しそうに料理をしているリサをリヴァイは静かにその様子を見ていた。
『なぁ、リサは地上へ上がっても帰ってくるよな?・・・はい、芋の皮剥けた』
『ありがとう。勿論、帰ってくるわよ!だって、ここは私の場所だもん』
トントントンと包丁で切っていく。
大切な人や仲間がいるこの環境以外にリサの選択肢はない。
『でもさ、もしそのアーヴェンっていう爺ちゃんが強制的にリサを連れ戻すって言ったら?』
『それはないよ。アーヴェンさんは優しい人だから、手荒なことはしない。私をリヴァイさんに託すと言った以上それはないわね』
『へー!じゃぁ、あくまでリサが自分で帰ってくるのを望んでるってことか』
『はは・・・でしょうね・・・。私の味方でもあるけど、父親側の人だから』
ま、俺はリサがいれくれたら何でもいいや!とすっかり料理にも慣れた様子で芋の皮を剥いていくイザベル。これもリサが来てから出来るようになったことだった。
地上へ上がる日の話をしながら、その日の食事は全員揃って食べた。