第49章 通行証と髪留め
『そうだ。この通行証は地上階段の通行証だ。憲兵らが使っているのと似ているが、これは一般市民用だ』
『そんな物がどうしてここに届いたのです?しかも4枚?』
リサは数えるようにテーブルに並べる。
承認番号は違えど、あとは全く同じ。
『それはリサに地上の風景を1度見て欲しいってことだろ。ご丁寧にきっちり4枚あってリサ、俺にファーランやイザベルの分もある』
『アーヴェンさん、何だかんだ言いつつも私を呼び戻す気満々じゃないですか!』
『地上へ上がれとは言い難いんだろ。お前のお袋や親父さんのこともあり、お前自身がここに居たいと言ったなら尚更』
リサは彼らといるなら、本当の家に帰らなくてもいいと思っていた。アーヴェンもあの時はリサに任せると言いつつも、やはり本心は帰ってきて欲しいということのようだった。
アーヴェンの気持ちは分からなくもないが、リサの意思は固い。
どうしようかとあぐねいているとリヴァイが口を開く。
『上がるぞ。地上へ・・・』
『リヴァイさん本気ですか?!でも、アーヴェンさんの用意してくれていたとはいえ、こんな4枚も・・・疑う訳ではありませんが・・・』
『そんな怪しむことはねぇ。念の為にこいつらに本物か調べてきてもらったが、どうやら本物のようだ』
ですよね・・・と心の中でアーヴェンに謝罪する。
『それでだ、リサ』
『はい?』
『地上へは俺とリサの2人で行く』
テーブルに並べられた通行証を2枚封筒に仕舞い、残りの2枚をひらひらさせながら伝える。
『え・・・4枚もあるのに何で・・・?』
『1つは俺、ファーラン、イザベルの3人が地上へ上がることで、アジトを不用意に空にしておけない。そして、2つ目、・・・これは爺さんには悪いが今後のために2枚は置いておきたい。どうしても仕事で必要な時に使う。通行証は簡単に手に入るもんじゃないからな』
ファーランとイザベルはうんうんと頷いていて、既に了解していた。
リヴァイは仕事で数えれる程度だが、地上へ上がったことがある。それに比べリサは1度もない。
アーヴェンの意図とは別として、地上を見せてやりたかった。