第46章 金色の鍵
エルヴィンの微笑みを最後に扉は完全に閉められ、リサの視界には暗闇が広がる。
手をギュッと握り、リサはエルヴィンに言われたように大人しくした。
小さく膝を抱えて座り、耳を塞ぐ。
『エルヴィンさん・・・無理をしないで・・・』
リサはただエルヴィンの無事を願った。
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『君たち、少しいいかな?』
『あぁ?』
オレグの自室を出て少し、エルヴィンは貴重品を抱えて歩く憲兵に声を掛ける。
フードは深く被ったまま静かな声が廊下に響き、憲兵は面倒くさそうな表情でエルヴィンへと振り返った。
『君たちが持っているそれらは・・・何かな?』
『は?お前いつのまに・・・もしかして、鼠ってのはお前か?!』
『・・・どっちが鼠だろうな』
『捕まえろ!!!』
エルヴィンと同じような体型の男が大きく振りかぶる。トンっとエルヴィンは後ろに下がると男の手首を掴み、後ろに捻りあげた。
『いってぇぇ!!』
『相手が誰であろうといきなり力でねじ伏せようとするのはいけない。まずは”対話”からだろう?』
もう1人がエルヴィンに殴りかかろうとすると、すっと手を出し停止させる。
『くそっ。お前はこの辺で牛耳っているというゴロツキか?!金目のものが目的か?!』
『ゴロツキ・・・?そのような者と同じにしないでもらいたい。それに金目のものなんか興味はないな』
『じゃ、じゃぁ・・・何なんだ?!』
エルヴィンはフードを脱ぐ。
『お、お前は調査兵団のエルヴィン・スミス!』
『・・・私を、知っているのか』
捻りあげていた手を離すと、男は自分の手首を掴みながら仲間の元へ走っていく。
兵団が違うとはいえ、格はエルヴィンの方が断然上。憲兵は思い出したかのように敬礼をした。
『では、話が早い。今、君たちが持ち出した物は元の場所に戻さないといけない』
『しょ・・・承知しま・・・した』
腑に落ちないといった顔で渋々エルヴィンに渡していく。
『エ、エルヴィン分隊長は何故ここにいるのです?』
憲兵から全て回収し、その中には勿論リサの探していたものもある。
『もちろん、”調査”だよ。私は調査兵団だからね』
そう言いながら、エルヴィンはリサの待つ方へ戻っていった。