第46章 金色の鍵
『リサ、息はちゃんとするように・・・』
エルヴィンはリサの様子を見て苦笑いをする。かというリサは心の余裕も蟻ほどしかなく、辛うじて息だけはしようと口元を押さえる手に隙間を作った。
『おい!!この部屋の鍵空いているぞ!!!!』
────?!
バタバタと廊下が騒がしくなると数名の憲兵が銃を抱えて入ってきた。隙間から見える動向に2人は息を潜める。
リサは震える手を抑える、落ち着くように深呼吸していた。
部屋に入ってきた憲兵は何故鍵が開けられているのか、鍵はどこにあったのか・・・等、疑問をお互いぶつけあっている。
『・・・・・・さっきの音はこの割れ物か。何かの振動や自然に倒れるようやものではないな・・・。となると、やはり鼠が入ってきているのか・・・この部屋を調べろ!』
ハッ!と数名の憲兵がベッドやクローゼットを探る。
いつかここの場所も開けられてしまうのではないかと、祈るように手を組む。
『ったく、ここのオーナーは衣装好きだったんだな。服や小物がずらりと並んでいる・・・』
他の者を指示していた男か辺りを見回していると、1人が何かを持って走ってきた。
長くロール状で白を基調とした生地にゴールドやシルバーで刺繍がされている反物である。
『あ、あれは・・・!!』
『リサどうした?』
『エルヴィンさん、実は私探し物をしていて・・・あれは私のものなんです。理由は言えないんですけど、あれは祖母の形見の1つなんです・・・』
出来るだけ小声で、エルヴィンに説明する。
リサは自分のハンカチをポケットの中で確認する。祖母が縫ってくれたハンカチとあの反物がリサの形見。
当の憲兵たちは鼠がいないと早々に判断すると、適当に貰って行こうぜ!と憲兵らしからぬ行動を取り始める。
時計、宝石、小物類・・・そして祖母の反物。
『こんな立派な反物だと高く売れそうだぜ!』
――――――??!!!