第46章 金色の鍵
『無理をしてはいけない。体は資本だからね』
立ち上がろうとするリサを制すると、エルヴィンは近くの椅子を持ってきて座らせる。
優しい笑みを向けて肩をポンとされると、リサは素直に受け入れ軽く笑みを返した。
『さて・・・どこから探そうか・・・』
腰に手を当て散らかった部屋を見回す。最上階の大半を占める大きさというだけあり、飾り棚やクローゼットなどがいくつかある。
『オレグさ・・・オレグは装飾品や衣服を大変好んでいました。殆どがそのような物が入っていると思われます』
厳重な鍵や扉のおかげで、オレグの自室のもので何かを盗まれた様子はない。
試しにエルヴィンが引き出しを引くと、時計やブレスレットなど高級なものばかり出てきた。
上から順番に引いては仕舞い、引いては仕舞う。
『・・・珍しい宝石まであるな』
『エルヴィンさんは何か骨董品を探してるのですか?・・・あ、いや・・・こういうの聞いちゃ駄目なんでしたね』
『・・・・・・”ある書類”を探している』
エルヴィンは戸棚の書籍を捲りながら話す。
パラパラと紙が擦れる音がする。
リサはエルヴィンの思わぬ反応に戸惑っていると、書籍を折りたたむとチラリとリサに顔を向ける。
『な・・・んの?』
聞くべきか聞かざるべきか迷ったが、リサは何故か聞く方を選んだ。
いつもの好奇心から来るもののはずなのに、その書類の内容が他人事じゃないような気がしたから。
エルヴィンの仕事はリサは知らない。
教えてくれないならそれはそれで構わないし、必要な以上に関わる必要もないと思っていたから。
でも、エルヴィンが探している”ある書類”というのが無性に気になった。
『人類の未来に大いに関わる書類だ』
青い双眼がリサを見下ろした。